最近読んだ小説──ジャンプアニメのように引っ張るラスト『DARKVICTORY』

最近どうも、早川文庫づいてるのだが、先週ようやく欲しかった本を手に入れ、数日かけて読み終わった。

早川文庫SF ウィリアム・シャトナー(本業は俳優)著 DARKVICTORY /邦題 新宇宙大作戦 暗黒皇帝カーク 斉藤伯好翻訳 上下巻 である。

これはアメリカのSFドラマ、新スタートレックのオリジナル小説で、スタートレック(一番最初のシリーズ)で主人公のジェイムズ・T・カークを演じたシャトナーの手になる作品だ。暗黒皇帝カークは前作、鏡像世界からの侵略の直接の続編であり、物語は事件の黒幕、皇帝ティベリウスの登場から始まっている。

一応簡単に説明すると、カーク艦長は劇場版スタートレック ジェネレーションズの最後で戦死するのだが、シャトナーの書いたスタートレック小説二作目、RETURN 放題:カーク艦長の帰還 でハイブリット生命体ボーグと結託したロミュラン帝国の野心家サラトレルの手により蘇生。エンタープライズEのピカード艦長らの協力でカークは洗脳を解かれ、自由の身となる。次作 サレックへの挽歌 では連邦に広まる疫病を食い止め宇宙を救う活躍を見せた。その後、艦隊とは一切の縁を切ったかつての英雄カークは、一民間人として恋人テイラニと辺境惑星チャルで静かな生活に入った。だが、またしてもカークは危機に巻き込まれる。
鏡像世界からの侵略では、カークは平行世界から来た、スポックたちに拉致され、協力をせがまれる。また、テイラニも何者かに誘拐されてしまう。一方、ゴールディン不連続空間で任務に就いていたエンタープライズは、時空の裂け目から行方不明になっていたUSSヴォイジャーが現れるのを見つける。
しかし、救助したヴォイジャーは平行世界のヴォイジャーで、ピカードたちは捕われてしまう。彼らは小惑星にある収容所に送られた。そこを支配していたのは平行世界のピカードだった。ピカードは強制的に労働させられるが、ひそかに脱出を図っていた。しかし、脱出計画は見破られ、エンタープライズクルーは絶体絶命の危地に陥る。
そこへ、平行世界のジェインウェイを艦長としたヴォイジャーが登場し、カーク艦長はピカードたちを救出した。
だが、突然そこへ、平行世界のカーク、廃皇帝ティベリウスが現れ、降伏か死ぬかを迫ってきたのだった……!

ここまでが前回の流れ。
本書ではこの後、カークとティベリウスの追撃とエンタープライズの自爆回避が描かれる。
小惑星に降下したティベリウスは巧妙に隠していた装置で逃亡を図る。カークはどうにか追いつき、カーク同士のバトルに。しかし肉体的に優れたティベリウスに宇宙服のヘルメットを割られたカークは、揉み合いながら真空の宇宙へ。そして、巨大な衛星に衝突しそうになった時、ティベリウスフェイザービームが。カークは気を失い、気がつけばラディソン艦長率いるUSSハイデルベルクの医務室にいた。
カーク艦長は致命的な傷を追っていたが、最新医療技術で一命を取り留めたのだ。
ラディソン艦長は平行世界について惑星連邦宇宙艦隊上層部は一世紀前から監視を行ってきたと明かす。
全ての原因はカーク艦長にあるとも。
カーク艦長は初代エンタープライズ時代、平行世界に事故で転送され様々な影響を与えて現実世界に帰還した。
平行世界ではその影響で歴史が変わり、連邦は誕生せず、地球帝国が覇権戦争を行い、銀河中の種族を征服、圧迫した。
平行世界のカークは皇帝ティベリウスとして暴虐を繰り返し、腹心の平行スポックはクーデターを決行してティベリウスを処刑した。
地球帝国は台頭したクリンゴン/カーデシア同盟に滅ぼされ地球人やヴァルカン人は奴隷にされていた(この辺の事情はテレビドラマ、スタートレック:ディープ・スペース・ナインを参照)。この世界の惨状はカークに原因があるとし、平行スポックはカークに協力を頼ってきたのだ。
だが、カークはラディソン艦長より事件から手を引き隠遁を要請された。カークは承諾したが、むろん形だけだった。
そして、カークは念願だったテイラニと結婚式を挙げた。
この時、カークは幸福感に包まれ、士官ではなくただ一人の人間として人生の素晴らしい時間を過ごした。
だが、テイラニが何者かに毒を盛られ、以て数ヶ月の命という状態に陥った。またしてもカークは危険な旅を余儀なくされる。
カークは艦隊上層部に掛け合い上層部が進める<サイン計画>に参加させた。
ティベリウスがテイラニを毒殺しようとした可能性があり、毒の解毒剤を求め、ピカード艦長たちとティベリウスが逃れた平行世界に行く。
カークはティベリウスの居場所を突き止め、潜入を果たしたが、そこで彼が目にした光景とは!?
そして、ティベリウスに対し驚くべき対応をするカーク艦長の行く先は!?
緊迫した場面で 完結編 に続く!!


さてさて。今回はやたらと謎ばかりが登場します。
いかにも胡散臭いラディソン艦長とハイデルベルク、三隻の科学艦。
サレックへの挽歌に登場したディープ・スペース・ナイン勤務のドクター・ム=ベンガ。彼女が連れられた謎の宇宙基地。消されたドクターの記憶。
<サイン計画>とは一体どのような内容なのか、宇宙艦隊の真意は?
ティベリウスの真の目的は?陰謀とは?

それから、下巻では意外にも、テレビ・ディープ・スペース・ナインのキャラであるガラックが活躍します。
ガラックはDS9唯一のカーデシア人。仕立て屋ですが、過去にはカーデシア帝国の諜報員でした。その能力と知識を活かして、ム=ベンガの抑圧された記憶を取り戻させるのでした。

さてカークはティベリウスの要求を飲み、ベイロックの<第一連邦>(オリジナル・シリーズに登場)の基地の場所を教えるのでしたが……はてさてどうなるのか。
完結編の栄光のカーク艦長も楽しみだ……。