海の家れもんが新商品をうpしはじめたようです(゜∀゜)


由比ヶ浜の空は今日も真っ青だった。


「あれ……?」
長月早苗は海の家れもんの中を見渡して、首をひねった。
イカちゃん居ないの?」
お目当ての女の子の不在に、残念そうな声になった。
「あぁ。ところで、早苗」
と、給仕をしていた栄子が早苗にお皿を差し出して言った。
「姉貴が新しい料理をだすんだが、試食しないか?」
「ヤキ……ソバみたいね」
鰹節と青海苔と紅生姜がトッピングされた、いたって普通のヤキソバだ。
「ヤキソバなら前からメニューにあったじゃない」
「ちょっと改良したんだ」
と、栄子は薦めた。
「まぁ、いいけど」
早苗はヤキソバを食べはじめた。栄子の口許が微かに笑った。
「……おいしい」
千鶴は料理の名人だから、美味くて当然なのだが、このヤキソバは風味がいつもと違っていた。
「なにか特別な材料使ってるかしら?」
早苗は箸でソバを掻き回した。ヤキソバの具はキャベツ、豚肉、もやし、それから白い……
「い、烏賊っっ……」
弾力のある、方形に切られた烏賊の足。
「えっ……まさか……」
「どうだ、早苗。うまいだろ」
「え、栄子。イカちゃん、今どこにいるの、ねぇ!?」
青ざめた顔で問い詰める。
「さぁね。わからん」
栄子ははぐらかすように言った。
「まさか……イカちゃんを……」
「ひょっとしてイカ娘ちゃん」
(!?)
背後に千鶴がいた。日頃と変わらぬ笑顔で。
「また海に、帰っちゃったのかもね」
「っ……」
早苗の意識は暗転した。
そして。
海の家れもんの特製烏賊ヤキソバは、瞬く間に評判となり、繁盛していた。
その店を、廃人となった早苗の虚ろな目が、いつまでも見つめていた……

(完)